●継承者
珍しく、家業のお手伝いなんかしてみた。
と言っても、書なんぞ中学2年で辞めてしまったわけで、家業の助けになるようなものを書けるわけがありません。
事務作業をお手伝い。
2時間くらい手伝って、「よーし、今日はバイト代をあげよう」と、期待をしていなかった報酬をいただけることになった。
綾小路一族の間では「金のなる木を育てている」と言われていた祖母の恩恵に与っていたため、祖母の生前は幸せだったけれど、祖母が亡くなった途端に路頭に迷っているママと私・・・そんなママが報酬をくれるとは・・・。
ま・・・まさか・・・祖母がその在り処を明かさぬまま、逝ってしまったと言われている、綾小路一族の誰もが、その在り処を探している、祖母の金のなる木を発見し、その継承者となったのか・・・。
ワクワクしながら、待っていると、目の前に差し出されたのは、現金でも、金塊でも、宝石でも、有価証券でもなく、ビニール袋に入れたタラコが3腹。
「超高級品よ~」
現物支給でした。
そりゃあ、大学の合格祝いにママの友達に、高級すじこを戴いて大喜びしたのは、他でもない私ですがね・・・あんまし・・・嬉しくない・・・かも・・・。
こうなったら、ママよりも先に、祖母の金のなる木を発見し、私がその真の継承者とならなくては・・・。